⑪逃げ癖のある人はエンジニアを目指してはならない

「逃げ癖と研究室不登校」シリーズの追記その1。初めての方は第1回からどうぞ。元々は第8回のおすすめ資格のところで記述していたのですが、エンジニアという職種に関しては分割・加筆することにしました。

 

分割・加筆の経緯

 

私が本シリーズを投稿したのとほぼ同時期に、Qiitaにて以下が投稿されました。

qiita.com

これまで私が指摘してきたような、逃げ癖がある人の詰み要素が広くカバーされています。リンク先の投稿者のように、怖がらなくていいから病む前に質問してくれという上司が多数だとは思いますが、ハイそうですねって行動できるのであれば私達は困らないわけで。実務能力にもコミュニケーションにも問題を抱える人をフォローするためのルールを明確に定め、職場環境を改善することである程度脱落を防げるかもしれませんが、私達のような「逃げる」性格を持つ場合はよほどのことがない限り、それでも困難を極めると思われます。

というわけで、この部分は少し書きたいことが多くなってしまったので、分割することとしました。

 

逃げ癖のある学生がエンジニア職を目指す前に考えるべきこと

 

エンジニアは向き不向きが最もはっきり出るといっても過言ではない業種(特にプログラマー)かと思います。なので、就活を開始する前にインターンアプリ開発などを通じてとにかく「能動的にプログラム・製品を完成させる」経験を積み、自ら知識・技能を取得していく能力があるかどうか、在学中に知っておくことが大前提です。プログラミングの勉強サイトやスクールだけでは、与えられた課題を受動的にこなすことがメインなので不十分です。特に文系や非理工系の方が未経験のまま飛び込むのは自殺行為です

もちろん、そこまで事前にしっかり取り組まずにこの業界に飛び込んだ方は大勢いると思います。ただし、しつこいようですが私達には我慢強さがないので、よほど適性がなければ初心者の壁を乗り越えることも困難です。研究と同様に、何がわからないのかすらわからないまま放置し、詰むことになります。既に入職が決まってしまっている場合は、ダメだった場合の次の就活をどうするか検討しておいた方がよろしいかと思います。

上記のエンジニアとしての適性を確認した方でも、まだ注意すべき特徴があります。

  • 業界全体の進歩が極めて早いので、新しい知識を常に習得していかなければならない。これまでの蓄積を捨てなければならない場合もあり、若者にあっさり追い抜かされる危険性は他業種に比べると非常に高い
  • フリーランスとして独立することも起業することも容易だが、参入障壁がないので、とにかく自主的かつ貪欲に立ち回る必要がある
  • 仮に独立したとしても、一人で製品・サービスを完成させることは考えにくく、資格職の開業ほどは個人の力量のみで完結しない
  • 基本的に海外も含めた他企業と競合するため、将来性が高い業界なのにも関わらず、常に将来への不安がつきまとう

さて、一口にエンジニアと言っても、色々とその中で分野が分かれています。ざっくり分けると、Web系やソフトウェア系、ネットワーク系やハードウェア系、SIer、データ解析系といったところでしょうか。私達がこの中から選ぶのであれば、需要が比較的安定してて、かつ競争が激しくないネットワーク系の有名企業(NTT、KDDIソフトバンクなどでしょうか)が無難であるかと思いますが、それでもその後の見通しが不透明ですし、この辺の企業は理工学系の修士でないと良い待遇で入ることも難しいのではないでしょうか。

 

まとめ

 

技術に対する興味・適性を事前に綿密に確認することなく、資格不要の技術系職種に就くことは、全力で反対します。私達の場合は「潰しを求めて潰れる」ことになりかねません。以前の投稿で業務独占資格について言及しましたが、これらの「最低限定められたことをこなすだけ、あるいはその場に存在しているだけで価値を生み出せる仕事」に就くことをまずは考えるべきであり、良い職場に運良く巡り会えて、ある程度こなせるようになってはじめて、科学技術を駆使した付加価値の提供を考えれば良いのです。

 

余談:人類の進歩と逃げ癖のある私達の未来

 

私達には自発的に考えて新しい価値を提供する類の仕事は厳しいです。しかし残念ながら、私が推奨したような、職場にいるだけで意味がある類の仕事は徐々に減っていくと思われます。

ここ数年「AIでなくなる仕事」が定期的に話題になりますね*1。安易な「〇〇は全く必要なくなる」的な話は鵜呑みにする必要はないでしょうが、作業が完全にパターン化したホワイトカラー職の、全体としての仕事の総量が今後減っていくことはおそらく間違いないかと思います。

非資格職は解雇規制以外の障壁がそもそもないですし、法改正によって規制緩和されたらもうダメですね。私達は真っ先に追い出される類の人間です。資格職も効率化が進む分、ひとつひとつのタスクに必要な人数や時間が減ってきて、結局は非資格職の傾向に緩やかに追従するのではないでしょうか。現在のところはまだ私達に猶予が与えられているので、今のうちに職場ガチャで当たりを引いてそこで独自の強みとコネを作ることでしょうね。この国の内外の状況を踏まえると、今後生まれてきて運悪く逃げ癖の「素質」を持ってしまったら、もう結構な確率で「詰み」になりそうです。

それにしても、「AIによって画一的で退屈な仕事から開放されて、より人間が取り組むべき仕事に専念できるようになる」的なことをお偉い方々はよく言いますが、正直それで恩恵を受ける人ってこの国では少数派ではないかと思っています。また、技術の進歩によって生産性はどんどん高まってはいるものの、それによって生じる新しい仕事がそんなに称賛されるものかという点も疑問です。私達がもし発展途上国に住んでいたならば、それによって自らの生活が良くなり未来が明るくなっていくとポジティブになれるでしょうけれども、発展しきってこの後沈む一方のこの国においては、必ずしも歓迎できるとは言い難いです。今さら昔に戻ろうなんて言うつもりは全くありませんし、科学技術の進歩によって世界のすべての人の幸せの総量は増えるとは思うのですが、日々取り組む仕事が「生活との結びつきがはっきりした物事」からどんどん離れていって、自分たちのやっていることが一体何のためになっているのかが、ますます見えにくくなっていくのではないかと危惧しています。

現在の人類の進歩は、逃げ続けてきた結果生きることそのものに嫌気がさしている私達にとっては特にクリティカルです。創造性を求められない程度に頭を使いつつ、直接的に他者に役立てるような、私達にとって数少ないちょうどよい塩梅の仕事すら奪われたならば、私達は持ち直すことができるのでしょうか。大して高くもない給料から多額の税金をむしり取られ、なけなしのお金を誰かの作ったあろうがなかろうがどうでもいい娯楽や、心身に害を与えるような嗜好品に費やして、現実逃避して死を待つ以外の未来が、本格的になくなってしまいそうです。嫌々生きて結局破滅するくらいならば、今すぐ死んだ方がマシかもしれませんね。

まあそもそも、穀潰しが未来の仕事について語る資格などあるものかって言われたら全くないので、ここらへんでもうやめることとします。