⑨逃げ癖のある人の大学進学・大学生活の指針

「逃げ癖と研究室不登校」シリーズ第9回。初めての方は第1回からどうぞ。第6回から続いた就くべき仕事に関する投稿で、見通しが少しでも良くなったのであれば幸いです。今回は大学進学に関して具体的に注意すべきことをまとめます。本シリーズで最も伝えたいことの一つです。

 

逃げ癖のある学生が選ぶべき学部・学科【大学1, 2年生まで対象】

 

長期の研究室配属や卒業論文が必須ではないことが最も重要ではありますが、それ以外にも大学の偏差値を必要以上に重視しないことも重要です。

  • 特に資格系の学部・学科の場合は、ストレート卒業率と資格試験合格率の方がはるかに大事。資格さえ取得できれば、学歴はそれほど(もはや全く?)重要ではありません。
  • 難関大学ではむしろ、医療系であっても中長期の研究活動を強制される場合があるので要注意です。また、資格試験対策も学生任せであることが多いです。東大をはじめとした旧帝大は地味に地雷です。ただし、偏差値の低い大学は資格試験合格率を上げるために留年させるケースもあるので、うまくバランスの良い大学を見つけましょう。「〇〇学科 留年率」などと検索すれば出てきます。
  • 一方で資格を取れるわけではない学科である場合は、上記の注意事項は当てはまらないので、ひとまず偏差値の高い大学(旧帝大早慶)から順に考えていけば良いでしょう。

もうある程度予想はついているかとは思いますが、私が推奨する学部・学科は以下の順です。 

  1. 最もおすすめ
    • 医学部医学科
  2. 結構おすすめ
    • 歯学部歯学科
    • 薬学部(6年制:薬剤師養成課程)
    • その他、業務独占資格を取得できる医療系学部・学科
  3. ややおすすめ
    • 法学部
    • 経済学部
    • その他、実学系・資格取得可能な文系
  4. あまりおすすめしない
    • 文学部など、非実学系の文系
  5. 避けるべき
    • 理学部
    • 工学部
    • 農学部
    • 薬学部(4年制:非薬剤師養成課程)

概ね、医療系>実学系文系>その他卒業研究不要の全学部>卒業研究必須の全学部ということです。なお、卒業研究がない理系(特に理学部の数学系など)もありますし、逆に文学部では卒業研究が必須の場合もあるでしょうから、上記はあくまでざっくりとしたランク付けです。また、実学系文系を上位に推しているのは、周囲も同様に資格試験や就活を最優先するため、情報を得やすい、浮きにくいなどのメリットを享受できるからです。私の無駄に長い大学生活を踏まえると、特に法学部は根暗でガリ勉なコミュ障におすすめできます。一方、理系でも陽キャは意外にいますし、実験などでグループワークも多いので、よく言われるほど陰キャ天国ではないです。

ちなみに、私は理系出身なので文系の研究スタイルはあまり良く分かっていません。友人の話を聞いた限りでは、理系に比べると文系は協力プレーというより個人プレーといった印象で、私達にとっては比較的親和性が高いかもしれません。どうでしょうか。

もしもう一度人生をやり直すことができるのであれば、私は医学部医学科を真っ先に目指すと思います。目指す大学は見栄をはらずに、僻地にある比較的難易度の低い小規模の国公立大学です。医療系は回り道した人間にも寛容なので、現役で不合格だった場合でも一浪か二浪くらいはするかもしれません。ただし、その場合でも無理せず医学科以外にコメディカル養成課程や早慶上智中央あたりの法学部を併願します。入学後は余力に応じて各種資格を取得して、逃げ道を増やすことを考えるでしょう。

ところで、もし皆さんのお住まいが田舎ならば大チャンスで、地域枠で地元の大学に入ることもご検討ください。卒業後数年を地元に残ることを強いられますが、それに見合うだけのメリット(合格難易度低下・奨学金支給)はあると思います。地方であっても病院なんていくつもあるので、もし職場が嫌になったとしてもその県の中で転々とすれば良いですし、それで地元義務を終えた段階で都会に出たければ出れば良いのです。

 

勉強がそこそこできてしまう受験生へ【高校生・浪人生まで対象】

 

ここまでの投稿で自分が研究活動に向いているか否か、目指すべき進路は何かについて、感じるところはあったとは思います。「偏差値よりも資格取得」が私の主張ですが、下手に勉強ができてしまうと、やはり上を目指したい、勝負したいという見栄が出てきてしまうものです。親や教師からの期待も大きくなるかもしれません。頭では分かっていても、やはり理性的な判断は難しいでしょう。

基本方針は概ね変わりませんが、親や教師あるいは自分自身が学歴厨だった場合の大学受験戦略をまとめます。

  • 文系であれば個人プレーの勉強だけで済む場合が多いので、心置きなく東大などのトップ大学を目指せば良いでしょう。特に実学系の法学部や経済学部であれば、そう文句も言われないでしょう。もし不合格で早慶やMARCHになったとしても、在学中の資格取得次第で十分逃げ道は作れるでしょう。
  • 問題は理系であり、全く興味がなくても医療系に進むべきだと思います。医学科であれば嫌がられないのではないでしょうか。その際はあなたとあなたの家族が満足できる範囲で、難易度の低い大学を受験校として選定しましょう。そして、近年は数学の配点が重い文系も多いので、滑り止めとしては文系もお勧めします。国立を第一志望とする方であれば、早稲田の政経・商、慶應の経済・商などでしょうか。特に東大ならば、入学後に進路変更する道もあるので悪くありません。とにかく、入学時点で研究室配属が確定してしまう大学・学科をあの手この手で理由をでっち挙げて、全力で避けるべきです。
  • 流石に言うまでもないかとは思いましたが、あなたがいかに抜群に優秀だったとしても、海外に進学など考えてはなりません。基本的に海外の大学は理工系ですら陽キャだらけですし、講義も実習もグループワークばかりなので、主体性がなければすぐに詰みます。どれほど英語が得意だったとしても、帰国子女でもなければコミュニケーションには不自由しますし、孤立して詰むリスクが極めて高いです。研究室配属がないのがせめてもの救いですが、それとは別のベクトルで非常に辛いと思いますよ。

 

研究活動をすることになりそうな場合【研究に興味のあるすべての学生および大学3年生対象】

 

親の希望をどうしても避けられなかったり、あるいはどうしても特定の学問分野に強い興味があるなどの理由で、理工系などの研究室配属が必須の学部に進んでしまう場合もあるでしょう。そこで、あなたの人生が詰むことを予防するという観点から、ベターな過ごし方について簡単にまとめます。

  • まだ専攻分野が決まっていない場合は兎にも角にも、卒業研究の要件が低い学科を選ぶに越したことはありません。卒論で求められる分量(何ページ必要かなど)や配属期間(1年以上いなければならないかなど)について、進学前に確認しましょう。それらが厳しいほど最低限の体裁を整えることすら難しくなってきて、失敗する危険性が高まるのは言うまでもありません。また、研究室配属は必須であるものの卒論の提出はオプションである学科がもしあるならば、優先的に検討する価値があります。
  • 大学4年春から研究が始まることが多いですが、研究開始前にきちんと逃げ道となりうる資格を取得した上で、就活の目処をつけておくことが好ましいです。旧帝大では特に、大学院に進学するのが当たり前といった風潮がありますが、鋼の意志でそれに抗います。研究のスタートダッシュがうまくいった場合にのみ、院試を検討すれば良いのです。所属大学で持ち上がる場合はそう落ちることもありません。そもそもあなたの人生にとっては落ちた方が良いと思いますが…
  • また、特定の専門分野によほど強い希望があるわけではなければ、可能な限りブラック研究室が多くなりがちな学科を選ばないことも重要です。例えば、化学系・生物系は実験や動物の管理など拘束時間が長くなりがちで、日々の生活や就活に支障が出る恐れがあります。

研究室の選び方は当然ながら非常に重要です。これに関しては他の様々なブログと概ね見解は一致しますので、自ら色々調べてもらいたいのですが、以下に重要だと思うポイントを簡単にまとめます。

  1. ブラック研究室との評判がない
    • 言うまでもありません。入ったら最後、逃げ場のない絶望的な環境の中で、あなたは必ず精神崩壊します。
  2. 自由すぎない
    • ①辛すぎない程度にコアタイム(研究室にいなければならない時間帯)がある、②先生への進捗報告の日時がきちんと定められている、③研究テーマは基本的に先生から指定される、などが重要な要素です。適度な縛りがないとあなたは必ずサボり、周りとの進捗の差が生まれ、劣等感から精神崩壊します。逃げ癖のあるあなたにとって「自由」は死亡フラグです。このように縛りは弱いがサポートも弱い研究室を俗に「放置系ブラック研究室」と称します。
  3. 仲の良い友人と同じ研究室に入る
    • あなたはコミュ障なので、研究室内で話せる相手などすぐに作れるわけもなく、孤立して居心地の悪さから精神崩壊します。それまでの大学3年間で可能な限り波長の合う友人を増やし、一緒の研究室に進むべきでしょう。
    • ちなみに、起業や留学などの一見するとポジティブな理由があったとしても、友人との距離が離れるので、逃げ癖のあるあなたは特に留年すべきではありません。当然、通常の学科試験で留年などもっての外です。
  4. 人気すぎず、大学院でも残ることが容易な研究室を選ぶ
    • あなたは新しい環境への適応力がないので、もし運良く(運悪く?)卒業研究がうまくいってしまい大学院へ進学する場合には、必ずそのまま同じ研究室に残るべきです。変に色気を出して挑戦してしまうと、必ずや前の研究室とのギャップに苦しみ、精神崩壊します。

なお、研究室に入ってしまった後の振る舞い方については、盛大に失敗した身ですし、そもそも本シリーズの趣旨から外れるのでここでは語りません。大学教官のブログの以下の記事が最も参考になると思います。私はこの記事で語られているやってはならないことの大半をやっています。

next49.hatenadiary.jp

その他、特に読む価値がある記事を載せておきます。

mitsukix.hateblo.jp

next49.hatenadiary.jp

 

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