宅建士試験体験記①〜令和時代の資格試験〜
約半年ぶりです。この秋に宅地建物取引士資格試験を受験・合格しましたので、その感想と近年の資格試験のありかたについて3回に分けて投稿したいと思います。
はじめに
以前の投稿で資格試験についてあれだけ長々と書いたのに、試験対策の内容について全く触れていないのも説得力がないかとは感じていました。夏頃に仕事が落ち着いてきたこともあり、メインの資格試験に落ちた場合の保険として一度検討し、参考書も購入していた「宅地建物取引士資格試験」に取り組もうと思った次第です。そして去る10月15日に受験し、11月21日に無事合格を確認しました。今回の投稿では当試験を題材として、令和時代の資格試験への取り組み方について自分の思うところを書こうと思います。
ちなみに、これを読まれている方のどれほどが宅建士という資格・職業に関心を寄せているかわかりませんので、試験対策の具体的な内容・結果・反省などについては次の投稿以降に回します。もしご興味があればそちらもご覧ください。特に時間にゆとりのある学生や主夫/主婦の方が半年〜1年かけて片手間で準備するのにもってこいの試験で、資格の汎用性も高い方ですので、ぜひどうぞ。
宅地建物取引士資格について
不動産適正取引推進機構の記載を抜き出します。『宅地建物取引業を営もうとする者は、宅地建物取引業法に基づき、国土交通大臣又は都道府県知事の免許を受ける必要があり、免許を受けるに当たり、その事務所その他国土交通省令で定める場所ごとに、事務所等の規模、業務内容等を考慮して、国土交通省令で定める数の成年者である専任の宅地建物取引士を置かなければならないとされています。』*1
具体的な業務としては、『宅建業法第35条に定める重要事項の説明、重要事項説明書への記名及び同第37条に定める書面(契約書等)への記名』が挙げられ、これらは必ず宅地建物取引士が行う必要があります。不動産の契約には莫大な金銭が動きますので、誰でも仲介ができたら困りますよね。不動産契約の最も大事な局面に責任者として関わることができるようになりますので、業界で働く上でまず取得を奨励される資格(というより取得していないと信用されない資格)と言えるでしょう。
ところで宅地建物取引士は以前は宅地建物取引主任者という名称で扱われていました。しかしながらその業務の重大性から2015年に士業へと格上げされ、それ以降受験者数も増加傾向にあり、本年度の申込者数は289,096名、受験者数は233,300名だったそうです*2。
宅地建物取引士資格試験の概要
宅建士試験は毎年10月に、原則として1点×50問=50点満点・四肢択一式・120分の筆記試験によって行われ、相対評価で例年上位15%程度が合格者となります。試験の範囲は以下のように分けられます。
- 問1~14:権利関係(民法・借地借家法・不動産登記法など)
- 問15~22:法令上の制限(都市計画法・建築基準法など)
- 問23~25:税法等(不動産取得税・贈与所得税・地価公示法など)
- 問26~45:宅建業法
- 問46~50:登録講習修了者免除問題(景品表示法・統計など)
問46~50は指定された講習を事前に受けていれば5点が確定するというもので、不動産業に既に関わっている方のみが申請できるそうで、この制度を利用した受験者は今年度は49,406名でした。
さて、本年度の試験は結果発表によると合格最低点が36点(50点満点)でしたが、私は44点でした*3。試験というものには慣れていますし、試験中の感触も悪くなかったのですが、思っていた以上にミスが目立ちました。巷では宅建士試験は簡単だとか言われがちですが、それはあくまで司法試験・公認会計士・司法書士・不動産鑑定士などの他の士業と比べているからであって、皆さんある程度頑張って勉強してきているなかでの合格率の低さ(今年は17.2%)なので、誰でも受験できるからと舐めてかかると足元を掬われる試験だと思います。実際に受験してこのことを実感しました。
資格試験全般の傾向について
さて、ここが今回の投稿で最も書きたかった部分です。本命だった資格試験と今回の宅建士試験の両方で改めて感じましたが、およそ資格試験の類は全体的に受験者のレベルが上昇傾向にあると思います。
資格試験というものはかなり規模の大きい宅建士でも20万人程度です。独学では太刀打ちできないほどの高難易度で、かつ受験者数の多い試験は数えるほどですので、予備校業者としての資格試験業界への参入障壁が高かったかと思います。したがって、これまではトータル何十万円もする高額な予備校が幅を利かせており、金銭的な余裕があり、都心部に住んでいる人以外は効率的に勉強することが困難でした。しかし近年のインターネット端末の普及により、初期費用を抑えることで安価なオンライン講座の開設が容易になってきました。さらに、これらの端末をフル活用したウェブサイト・アプリ設計を行うことで、勉強の進捗管理もより洗練されてきており、初学者や勉強がそれほど得意でない方でもコスパの良い試験対策をすることが可能になってきました。このような形で講座を展開する新興サービスに加え、近年はYouTubeを通じて個人レベルでの講座開設も見受けられます。
要するに私が伝えたいのは、受験生の上位X%などといった相対基準で合格が決まる試験は基本的に難易度の低下を考えにくいため、可能な限り早く勉強を開始してさっさと取得しましょう、ということです。勉強が得意な方であってもポテンシャルではカバーしきれなくなってきていますし、勉強が苦手な方はきちんと計画立てて気合を入れてやらないと永久にダラダラ落ち続けることになります。皆さんの置かれた状況はそれぞれだと思いますが、もし興味のある資格がありましたら、まず予備校講座の開設状況という観点から近年の動向を調べてみたらいかがでしょうか?事前の情報収集と初動の重要性はこれまで以上に高まっていると思います。