宅建士試験体験記②〜資格試験への効率的な取り組み方〜

前回の続きです。今回の投稿は宅建士試験を検討している方に向けた解説ですので、関係ない方は読み飛ばしてしまって全く構いませんが、資格試験への臨み方という点では応用が効くところもあるかと思いますので、お時間がありましたら流し読みしていただければ幸いです。

 

試験勉強のスケジューリング

私の勉強スケジュールはおおまかに以下の通りです。

  • 【昨年春頃】参考書『みんほし』を一度通読し、ウェブサイト『宅建士試験ドットコム』で過去問2,3回分を解く(その後メインの試験に専念し、合格したため放置)。
  • 【今年7月~8月】時間に余裕ができたので、勉強を再開。スマホ宅建士試験ドットコムの一問一答で過去10年分をひたすら潰す。誤った問題は解説部分をスクショして写真フォルダに蓄えておくとともに、特に苦手だと感じた部分は参考書で確認し、付箋を貼っておく。勉強時間は平日30分~1時間・休日1時間半~2時間程度。
  • 【今年9月~】直前問題集『出る順』『あたる』を週1ペースで解き、誤った問題を適宜復習。薄めの直前まとめテキスト『出るとこ予想』を通読し、過去問や模試から特に苦手と感じた部分や暗記事項のまとめを余白に追記しながら、自分のための最終チェックノートを作成する。宅建YouTuber棚田氏『不動産大学』の動画を移動時間や単純作業中に垂れ流す。勉強時間は平日1時間~1時間半・休日2~3時間程度。

勉強の順番ですが、宅建士試験対策としてスタンダードな「①宅建業法を極める→②権利関係の原理原則を理解する→③法令上の制限・税その他・5問免除を試験前1ヶ月から頭に叩き込む」の方針でやっていきました。①と②の順番は意見が分かれると思いますが、②はコスパが悪い割に長くてダレるので途中に入れた方が良いという立場です。勉強時間は昨年の勉強貯蓄も含めるとトータル200時間程度ですかね?少なめの方だと思いますが、これよりもさらに短縮するのは暗記の才能によるところが大きく至難の業です。我ながら割と万人におすすめできる、かなり効率の良い勉強方法だったのではないかと感じていますので、次の節から具体的に共有したいと思います。

ところで宅建士試験に限らず、およそ資格試験の勉強というものは「試験形式の特徴や必要な勉強時間の割り振りについて事前にしっかり調査する→まず全範囲を可能な限り短時間で流す→過去問を解きながら網羅的に基本知識を定着させていく→自らの苦手分野を明示的にまとめ上げ、重要度の高い順から注力すべき範囲を潰していく→本番を想定した模試で当日の立ち振舞いを準備しておく」が基本です。もし自分でこの手のスケジューリングをすることが苦手であれば、前回の投稿で示した通り、いつ何をどれだけやればよいのか、勉強スタイルの細かいところまでを提案してくれる予備校サービスを利用することが無難です。

 

試験勉強の教材のレビュー

宅建士試験は他の士業と比べるとそれほど高い難易度の試験ではないので、試験勉強に慣れていれば予備校を使わずとも独学で問題なく合格することができます。独学を選択してこの投稿を読んでくださっている方々にとって最も有意義なのは、各教材がどれほど有効だったかを忖度なく理由とともにお伝えすることでしょう。ここでは私が使用したものについて振り返り、どれほどおすすめであるかを★1~5の5段階評価で示します。なお、来年度用の最新版が既に発売済でしたらそちらをリンクしています。

 

【参考書1】滝澤ななみ『みんなが欲しかった!宅建士の教科書』TAC出版(2023/10/6)(おすすめ度★2)

Amazonでの評価が高かったので購入しました。基本的な内容は網羅されていますが、個人的にはつくりがあまり好きではなかったので少し後悔しています。具体的には、使用貸借などの少し難度の高い論点がなぜか権利関係の冊子でなく法令上の制限・税その他の冊子の最後に参考論点として飛ばされていた上、解説もサラッとしすぎていて違う切り口で聞かれたときに対応できないと感じました。フルカラーなのは良いですが、カラフル過ぎで本当に大事なところが分かりにくかったとも思います。あとは語呂合わせが少なかったです。法令上の制限を筆頭に、どうしようもない暗記事項は無理矢理にでも作ってくれた方が良いと思っています。とっつきやすい参考書だとは思いますが、これ一冊で知識が完結しない割には分厚いので、もし当時に戻れるのであれば別の本を買っていると思います。

【参考書2】TAC宅建士講座『宅建士 出るとこ予想 合格(うか)るチェックシート 2023年度』TAC出版(2023/7/12)(おすすめ度★5)

書店でたまたま見つけて購入してみたのですが、期待以上に大活躍してくれました。基本的なテーマを2または4ページで図表などを適宜用いてコンパクトにまとめる一方、最新年度の法改正についてもマークをつけてくれていました。もちろん薄いこの本1冊で過去問をカバーすることはできませんので、省略されている部分(例えば建物別の用途制限など)は自分で余白やルーズリーフに記入することで補いました。コスパよく試験直前のまとめノートとして最大限活用できましたので、非常におすすめします。

【ウェブサイト1】宅建士試験ドットコム(おすすめ度★5)

言わずと知れた無料オンライン過去問演習サイトです。過去問演習および一問一答が20回分以上行うことができ、なおかつしっかりした解説もついています。掲示板機能など一通りの機能も有しています。過去問は時間の許す限り解いておくべきなので、網羅性の点で分が悪い市販の問題集をあえて購入する必要は一切ありません。ただし、試験勉強ではまず過去問の隅々の穴を潰すことを目指すべきなので4択の通常の過去問演習はおすすめできず、一問一答のみを年度の新しい順から行っていくのが最もコスパが良いと思います。また、何も考えずにダラダラ演習すると2周目以降の効率が低下するので、問題のお気に入り登録、解説のスクショ、苦手分野のメモを取るなど、後々の復習のしやすさを高める工夫を凝らすと良いでしょう。

【ウェブサイト2】棚田行政書士の不動産大学【公式チャンネル・宅建】(おすすめ度★4)

宅建」に関してYouTubeで検索したら上位に出てくるチャンネルです。これ単体で試験対策できるかというとそれは苦しいと思いますが、一通り基本知識を身に着けた上で、苦手分野の補強のために該当箇所の解説を聞いたり、試験前の一問一答クイズをながら聞きしたりするなど、ポイントを絞った使い方をすればかなり威力を発揮すると思います。試験前1週間は随分お世話になりました。

【予想問題集1】東京リーガルマインドLEC総合研究所 宅建士試験部『2023年版 出る順宅建士 当たる!直前予想模試東京リーガルマインド(2023/5/31)(おすすめ度★5)

予想問題集は最低1冊は購入すべきだと思いますが、どれか一つに絞るなら断然これだと思います。なぜならLECのウェブサイト上に回答を登録することで、登録者の正答率の統計や合格可能性、特に復習すべき問題についてのデータを得ることができ、自らの現状の立ち位置を知ることができるからです。模試を受験するのは手間でしたし、この本では計4回分のセットがありますので、間隔を空けて解くことで試験勉強の成果が実感できると思います。なお、難易度は本番より高く、登録者の平均点も極めて高いので、得点や合格可能性が低いこと自体は全く気にする必要がないと思います。私は1回目29点(合格可能性C)、2回目33点(同B)、3回目32点(同B)、4回目36点(同A)でした。

【予想問題集2】TAC宅建士講座『本試験をあてる TAC直前予想模試 宅建士 2023年度』TAC出版(2023/6/4)(おすすめ度★3)

基本的な作りは上記LECのものと変わりませんが、こちらは結果の統計を得ることができない点でマイナスです。こちらの問題集の出来が悪いとは言いませんが、模試はあくまで模した試験ですので、どちらか一方だけで十分だと思います。

 

試験の結果・反省

前の投稿で記載した通り、私の成績は44点で合格基準点36点を8点上回っていました。ドットコムに自己採点を登録したなかで上位3%程度なので*1、実際では上位2%程度なのかもしれません。内訳をみてみると、権利関係10/14(うち民法6/10)、法令上の制限8/8、税等2/3、宅建業法19/20、免除問題5/5でした。

とりわけ権利関係の民法分野が壊滅していましたが、民法はもともと単純な暗記では取り組みにくく過去問の焼き増しも少ないため、最も得点しにくい分野と知られており、限られた準備時間をあまりここに費やしませんでした。思い返すと勉強時間の内訳は宅建業法30%・法令上の制限30%・権利関係25%・税その他15%くらいだったかと思います。試験対策という観点ではタイムパフォーマンスの良い理想的な結果だったとも言えます。民法の4問ミスよりもむしろ、宅建業法のミスの方がはるかに罪深いですね。

今年度は法令上の制限がかなり易化しそれ以外が概ね変わりなしという感触で、予備校各社の講評とほぼ同意見でした。奇問がほとんどなく試験後は過去数年で最も取り組みやすい問題だったと感じていたため、ボーダー40点もありうるかと思っていましたが、予備校公表の得点分布を見てみると意外に受験者の得点は伸びていなかったですね。振り返ってみると個数問題や法改正事項に関する問題が多かったので、基本知識があやふやなままで、あるいは宅建士試験の特徴を軽視して法改正などの情報をアップデートしないままで、試験に臨んで撃沈した方が多かったのではないかと考えています。

今回はここで一区切りとし、次の投稿で宅建士試験に関する投稿をまとめようと思います。

 

次→宅建士試験体験記③〜誤答の復習〜